不倫慰謝料が払えない場合、減額、分割払い、期限延長は可能か
1 慰謝料を払えない場合の対処法
浮気・不倫(不貞行為)をしたならば、相手方へ慰謝料(精神的損害に対する賠償金)を支払う必要があります。
しかし、高額な慰謝料を請求された場合、慰謝料を請求されたら必ずその額で支払わなければならないといった決まりはありません。
ご自身が現実的に支払える額まで減額交渉して折り合いをつけ、対応していくことが大切です。
また、慰謝料は一括でしか支払えないと考える方も多いですが、実は、交渉次第で分割払いを認めてもらえる可能性もあります。
しかし、いざ交渉するとしても、どのように対応したら良いか分からないでしょう。
まずは、慰謝料を請求されたが支払えない2つのケースと、その対処法を見ていきましょう。
⑴ 慰謝料を支払えない2つのケース
「慰謝料を請求されたが支払えない」というケースには、2つの状況が想定できます。
・いきなり請求されて支払えないと思った
・慰謝料支払いに合意したが、途中で支払えなくなった
「弁護士から連絡があって(内容証明が届いて)いきなり不貞行為に対する慰謝料請求された」というケースでは、突然のことで驚いていることでしょう。
どう対応したら良いか分からず無視してしまう方もいます。
他方、慰謝料支払いには合意したけれど、実際に支払いの時期になると「支払う余裕がなかった」という方もいるでしょう。
会社をいきなり解雇された、介護などのご事情でこれまで通り働けなくなってしまった、という経済的事情もあるかもしれません。
実は、どちらのケースでも基本的な対処法は同じです。
それは「相手方と交渉を行うこと」です。
「今すぐこの額で支払ってほしい」と相手方が要求してくることもありますが、支払えない事情をしっかりと話せば、相手方に譲歩してもらえる可能性があります。
もっとも、ただ「支払えない」と言っても相手方は納得しません。
相手方に譲歩してもらうためには、次の対処法を実践してみてください。
⑵ 減額、分割払い、延長
提示された額を支払えないと判断した場合は、以下のいずれかを交渉することになります。
①減額をお願いする
「慰謝料額はいくらまで」という決まりはないものの、請求者に対して強く出ることができず、相手の言い値で金額が決まってしまうこともあります。
しかし、請求金額が相場よりも高い場合、支払える金額でない場合には、きちんと交渉すれば現実的な額に落ち着くことも多々あります。
相手方も支払ってもらわなければ意味がないため、真摯に交渉を行えば最終的には減額にも納得してくれる可能性があります。
到底支払えない金額の場合は、減額交渉をしましょう。
②分割支払いにしてもらう
通常、慰謝料を請求された方は「慰謝料は一括で支払ってください」という支払い条件を提示されていることでしょう。
実際、滞納のリスクを減らすため、慰謝料支払いは一括が原則です。
しかし、本来は支払い方法に制限はありません。
そのため、互いが納得をすれば分割払いも可能なのです。
慰謝料を一括で払えない場合は、現実的に毎月支払える金額にしてもらうのが大切です。
実際の収入・経済的事情もお話して、「月々いくらなら支払えるのか」「どれくらいで支払い切れるのか」を相手に納得してもらわなければなりません。
③支払い期限の延長をお願いする
慰謝料の示談交渉では、支払い期日を決めていたことでしょう。
しかし、実際の期日になると思ったようにお金が回らず、用意できなかったという事情が出てくることもあります。
このようなケースでは、支払い期限の延長をお願いするという方法があります。
お願いする場合は、期日に支払えないこと、支払えない理由、いつ支払えるのか(どのくらいの期限を延長したいのか)を明確に相手に伝えるようにしてください。
このように、慰謝料が支払えない場合でも冷静に対応することで対処することは可能です。
相手がなかなか応じてくれないことも予想できますが、謝罪の上で交渉を行えば、減額や分割、期限の延長に応じてくれる可能性は十分にあります。
減額・分割払いが認められる事情とは?
慰謝料を減額したり、分割払いにしてもらったりするためには、それ相応の事情が必要となります。
具体的には、収入や経済的事情の説明です。
実際に支払い能力がないということを相手に説明して納得してもらうしかありません。
多額の慰謝料を一括で支払える余裕がないことを、給与事情などを用いて具体的に証明することになります。
2 慰謝料が支払えない場合に弁護士に依頼するメリット
次に、慰謝料を支払えない場合に弁護士に依頼するメリットをご説明します。
⑴ 交渉に応じてもらえる可能性が高まる
実際にご自身で交渉を行った場合でも、相手方が必ず応じてくれるとは限りません。
一括払いや請求当初の金額に固執されることもあり、慰謝料を支払う本人が相手では冷静に話し合えない場合もあります。
この点、弁護士となら交渉に応じてくれるケースも数多くあります。
弁護士が代理人としてつくことにより、相手にも真剣に受け取ってもらいやすくなります。
また、「支払いたくないから減額を主張してくるのだ」と相手方が思っているケースも少なくないのですが、気持ちの問題ではなく、実際に支払えない経済的事情があることを弁護士からご説明することで、ご理解いただけることもあります。
⑵ 交渉から訴訟まで法的手続きを任せられる
弁護士に任せれば、交渉自体だけでなく、示談内容の妥当性もチェックしてもらうことができます。
法的なアドバイスをもらえるのもメリットの1つです。
また、最終的に折り合いがつかず、訴訟(裁判)になってしまうようなケースでも、弁護士に任せていれば慌てる必要はありません。
最初から最後まで法的な手続きすべてを弁護士に任せられるのは、大きなメリットの1つといえるでしょう。
⑶ 後日トラブルを防げる
本人同士での交渉で陥りがちなのが「言った・言わない」のトラブルです。
「あの時あなたはこう言った」「いや、その後に別の合意をした」と話がもつれてしまうことがあります。
弁護士に任せていれば、正式な文書(示談書・和解書)として、必要ならば公正証書を作成して合意内容をまとめるため、後日問題が浮上することを回避できます。
特別受益は遺留分の対象となるのか 示談はどれほど重要なのか-窃盗事件の起訴と不起訴